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2006/05/25

遊びの庭。−TARO&ISAMU−

旅の回想をする前に、埃を払っておきたい記憶。

前衛・コンテンポラリーなアートや建築、
即興的パフォーマンスやインスタレーション。
若き日の蝙蝠は、そういった抽象的な表現のよろずに、
興味はあっても、正直どこか手放しで心酔できずにいた。
おそらく心の入口に「知らなくては、解らなくては」という
焦燥にも似た古暖簾が一枚下りていたんだろう。
実際、およそ魂の欠片も感じられない貧しきモノも、
世の中にはわんさか転がっていたのだから仕様がない。
それでもそれらと隔絶する気はなく、
気の向くまま、ことある事に足を向け、
自分の素眼を試すつもりで向き合ってみたりした。

心から楽しくなったのは、子どもの頃の目線を取り戻し、
「ここは遊び場なんだ〜」と感じられた時だった。
それまででいちばん楽しく遊べたのが、
東京南青山3丁目にある故岡本太郎邸のお庭だった。
今の仕事に就いてまだ若干2年目の若蝙蝠は、
某社の情報誌取材で、氏のお宅の門戸を恐る恐るくぐった。
氏の著書のほとんどを事前に読破して臨んだ甲斐あり、
インタビューは和やかに進み、お庭へ案内していただく。
そこには、見覚えのある数々のモニュメントが、
瀟洒な都心のエリアにしては閑静な小さな庭に、
ぼうぼうの草木に囲まれて、「にこやかに」並んでいた。
名古屋・久国寺の梵鐘「歓喜」のミニチュアは、
軒先の物干し竿に無造作に揺れていて、隆々とした突起も、
どことなく可愛らしく見えた記憶がある。
と、やにわに太郎先生。古サンダルつっかけ、
木槌を手に、これまたやみくもにその角をぶっ叩き始めた。
何重奏もの錆びた鉄の音が、
鈴虫のように軽やかに、自由奔放に鼓膜に響く。
もの凄く楽しい、秘密の遊び場に連れてきたもらった気分。
太郎先生は、“いなかっぺ大将の大ちゃん”(笑)みたいに、
蝙蝠の手を取り、つま先立ちで、踊り出す。
蝙蝠も楽しくなって、それまでの緊張が解れちゃいました。

それまで美術館や公共施設、印刷物で見る氏の作品を、
蝙蝠は、そもそもあまり好きではなかったんだな。
でも、大阪万博公園に今も雄々しく立つ太陽の塔のB面や、
遊具と同じように公園内に置かれた作品、
そして、今は「岡本太郎記念館」として一般公開されている、
あの懐かしのお庭にあった“子どもたち”は、
みな一様に、どことなく無邪気で、愛くるしい。
蝙蝠は、ようやくぶ厚く薄汚れた老舗暖簾を、
岡本邸の小さな白い門を境界線にして、
エッヤッ!とくぐり抜けられたのでした。

それから10年ほどの時が過ぎて。
再び私を「遊びの庭」に連れ戻してくれたのが、
NYウォール街の外れのチェースマンハッタン銀行中庭、
イサム・ノグチ作のSunken Garden(1961-64) Red Cube(1968)
あのグランド・ゼロはその近く。
当時はまだ、WTCのツインタワーが堂々と仁王立ち。
その足元をちょこまか、あっちからこっちから覗いては、
自分だけのお気に入りの景色を切り取る。
その縦横無尽な楽しみに、すっかり味をしめてしまったの。

写真は上から
直島の海辺のアイドル・草間彌生「パンプキン」
ベネッセハウスの空中テラス
大竹伸朗「シップヤードワークス 船底と穴」
「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」・壁画「創造の広場」


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在ること居ること。-4泊5日四国旅-

蝙蝠の旅はいつも、「何を見に行くか」ではなく、
結局、「何に出会いに行くか」が目的になる。
NYのPS1Museumで見たジェームズ・タレルの空が、
瀬戸内海の直島に在ると聞き、また会いに行きたかった。
というのも理由のひとつだけど、それが目的じゃない。
いつも海を渡る旅は独りで行くことの多い蝙蝠が、
美術館展示のデザイニング等を手掛ける女友達と、
同じ空を違う眼で感じよう!という「ノリ」も背中を押した。
いっしょに歩き、同じ風景の中で、
それぞれに違う心象に出会うのもオモシロイかあって。
「体験」そのものが、想像を超えてより膨らむ期待感。
そんな楽しみ方を、お互いに自然体で分かち合えたら。
そういう意味では、とても贅沢極まりない旅になった。

徒労は避けたかったから、ふたりお得意の下調べは完璧に。
交通費も可能な限り抑え、旅程は“緩急”を大切に計画。
そのぶん4泊5日間、美酒の杯を鳴らし続けよじゃないの。
最初の乾杯は、瀬戸内海の船上で、風に吹かれて。
お天気は危うくても、気分はすこぶるピーカン。
タレルの光イサム・ノグチのストーンパワーに導かれて。
蝙蝠たちは、初めて渡る直島・四国という未知の磁場で、
「其処に居る・在る」ことの重要さを、
自らの肉体で、ダイレクトに鮮烈に体験することになる。
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2006/05/24

五月の薔薇園。−鶴舞公園−

まるで亜熱帯の雨季のような1日。
宵より蕎麦屋で、良い酔い心地。醒めて、朝。
シャワーを浴び、素足で桐下駄つっかけ、お散歩へ。
歩道橋を大股で闊歩して、
気持ちよく洗い流された空を仰ぐ。
蒼葉がさざれ鳴く木立をすり抜けたら、
甘い香り立ちこめる薔薇園へ。
百花繚乱の眺めは、この時期だけの、美楽。
彩りだけでも、ささやかに、おすそわけ。

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2006/05/16

古今東西安藤忠雄 −表参道ヒルズ−

ゴールデン・ウィークの東京なんて、行くモンじゃない。
それが蝙蝠の鉄則だったはずなのに。嗚呼、仏サマ。
しかもホテルの予約が連休中最も取れない日程。
にもかかわらず、禁断の地へ入城する羽目になったのは、新宿ピットインにて、山下洋輔(pf)、大友良英(g)と、中村達也(ds)のライブがあったから。(日記に報告済み)
翌日には蝙蝠が長年サポートしているpikaiaのNaveちゃんがメンバーで活躍してる忌野清志郎 & NICE MIDDLE with NEW BLUE DAY HORNSの日比谷野音ライブへ。
清志郎GODの「イエー!って言えー!」に大爆笑。何と初の楽屋入りで、打ち上げ乾杯までさせてもらっちゃいました。ラッキー!音楽の八百の神様に囲まれて飲むビールは、黄金の味。

行くとなったらもう、人でごった返す渋谷でも表参道でも行ってやる!とブチ切れ、ライブ前にリサーチもかねて表参道ヒルズに突入!5月はこの後瀬戸内海の直島にも行くので、「安藤忠雄月間」ということにしてまおっと。
と、意気込んだものの、人混みが過ぎて建築そのものの風景が見えてこず、全体像もわずかな時間では把握し難かった。同潤会アパートの名残を生かしたという住居部分も、中途半端な「質素感」しか感じられず、蝙蝠にとっては消化不良気味。建物は生きものだから、今は派手さがないようでも、そのぶんこれから先の風化や変化を楽しんでいける大都会のオアシスになればと思う。かつての同潤会アパートのように、緑の蔦に覆われていく中で、そんなイメージに自然と近づけるのかもしれないね。安藤建築の粋って、そうした「違和感」と「調和」とが、メビウスの輪のように時間軸の中で重なり繋がっていくところに、不思議な自然観が宿っている。そしてその計算は、光や人や時間がふいに変化した瞬間、「はっ!」と胸を空くように視界に鮮やかに映り込んでくる。

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蝙蝠は蝙蝠らしく、ブランドショップは軽めに流して、お目当ての地階ワインショップ&ブラッセリーバーBISTY'Sへ直行。
事前に、蝙蝠が参加するワインとチーズの会の先生より、「プリペイド方式でいろいろなワインを少しずつテイスティング買いができる」と聞いていたので、まずは慌てず、ディスペンサーケースをチェック。3,000円台〜30,000円台のワインが、20mlから小刻みな分量・値段設定で試せるというスタイル。早速2,000円分のプリペイドカードをレジで購入し、席を確保。立ち飲みでもOKなのよ。
最初はアルザスの白からスタート。50ml400〜600円クラスなら、お家ワインのリストにも入れられそうなので。3度目あたりから、20mlでちびちびとブルゴーニュやボルドーの赤をお試しお試し。4種目あたりで蝙蝠、はたと気がついた!やみくもに多種を呑んでも意味がない!チーズプラトーもあるんだから、やっぱりフルボトル20,000〜30,000円クラスの、めったやたらには自腹で開けられないヤツを試したい!
そこでカードを差し込んでみたら、残金はわずかに600円。20mlで740円だったりするわけだから、ちょろっと足りない。・・・迷わずレジへ向かい、カードに1,000円分追加チャージしちゃいましたよ。
当然じっくりデキャンタージュされてはいない上に、50mlでは、開く前に胃におさまってしまう。このあたりさえクリアできたら、このシステムはかなり充実感がありそうです。通ってしまいそう。名古屋になくてよかった、ホッ。
ふと目をグラスから離して店内を見回したら、料理の鉄人でおなじみ、服部栄養専門学校の服部幸應先生が、にこやかにフレッシュジュースを飲んで歓談しておられました。

ほろ酔いで長蛇の列が途切れたジャン=ポール・エヴァンに立ち寄り、ジュエリーみたいなチョコの小箱を買って退散。
観光客のおばちゃんたちに混じって、ランチの列に並んでいる表参道のヒルズ族。どこかしらのヒルズとくらべて、ほのぼのしてる感じは、土地柄と低層構造のせいかもね。地階ギャラリーで開催していた、ヴィム・ヴンダース夫妻の写真展「尾道への旅」が、かつての同潤会アパートの名残を感じさせてくれてました。
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