« 胡桃オイルとフラワーソルト。 | トップページ | 9時間のアラビアン・ブレイク。 »

2008/05/19

向田邦子の世界。

Kuni

媚びや卑屈さなど微塵もない、あっけらかんとしながら機微に長けたところに、若い頃から惹かれていました。女性特有のウェット感はなく、男性には真似できないウィットにあふれていて。潔いけれど、男性的なわけじゃあないんですね。女傑というよりは、ずっと女学生みたいな“おきゃん”さとみずみずしさがあるかんじ。

ご存知『時間ですよ』『寺内貫太郎一家』や『阿修羅のごとく』『あ・うん』などの脚本家、エッセイスト、小説家。1981年の飛行機事故による急逝の報は、まだかろうじて文筆業に憧れていた高校生の蝙蝠すら「惜しい」と感じた訃報でした。

原稿を片っ端から上げて、ホッとひと息。今週末からのイスタンブール行きに備えて、10年更新したパスポートの受け取りに行った帰り、高島屋にて開催中の「向田邦子の世界展」の初日へ。

展覧会のキャッチコピーは、
<時代が変わっても、彼女はモダンの真ん中にいる>
彼女の趣向をテーマにした展覧会においての“モダン”という表現が、どこか薄っぺらく感じるのは、たぶん的を射てないからでしょう。「もっといいコピーがあるだろうになあ」と少し残念に思いながら、思ったより大規模な会場に足を踏み入れた。途端、コメントパネルの前でまたも首をひねってしまいました。
なぜに、“サトエリ”。
しかも、とっても中途半端な絡み具合なのね。どういう経緯での抱き合わせ企画だったのかしらん。
そういう疑問はひとまずスルーして、
「向田邦子の世界」にどっぷり浸りに歩を進める。

展示内容はミーハー感たっぷり、それはそれで存分に楽しめる内容でした。
ジェンセンの水着やボッテガ・ヴェネタの小ぶりのバッグをセレクトするあたり、ほんとに先駆けたセンスの光る人だったことが窺えます。
仕事、ファッション、器や美術の趣味、そして友人たちと猫の存在。「残り物ありもの」でつくる、酒の、ごはんの、もてなしのための料理。豆皿や青磁の双魚の器コレクションは、蝙蝠の一番だいじ器と共通していて、嬉しくなってしまいました。

そして、極めつけは父との関係。
「でてけ」「でていく」というやりとりは、ハタチの春の蝙蝠と父とのやりとりと同じ。当時彼女は30歳で、東京オリンピックの年だったという。奇しくも蝙蝠はその年の夏に生まれたのでした。
海苔巻きの端っこが好きなのも同じ。父との海苔巻バトルのエッセイは、文字を追っているだけでドラマを見ているよう。

森繁久彌からの便りにはぶっ飛ばされますよ、皆さん。

彼女の御用達「うまいもの」も会場にて販売。
展示品にもあった「う」の引き出しに詰まっていた、うまいものコレクション。後ろ髪を引かれつも、『向田邦子 暮らしの楽しみ』という本だけ購入。暮らしの手帖が出している『すてきなあなたに』シリーズ、ジョエル・ロビションの『食材辞典』、伊丹十三の『ヨーロッパ退屈日記』、小沢昭一の『私は河原乞食・考』(番外)、ピーター・メイルの『南仏プロヴァンスの12ヶ月』、『ハリーズ・バー』などとともに、蝙蝠の枕元バイブルに追加です。

展示に触発されて、以前読了した『眠る盃』を引っ張り出して、これを今週のドバイでの9時間トランジットのお供に連れて行くことにしました。

それにしても、池波正太郎や向田邦子など、食べ物や酒のある風景を描くのが巧みな作家に、蝙蝠、なぜにこうも弱いのか。開高健や白州一家とはまた違う、なんとなく素顔のおいしさが体と心に染み入ってくるのですよね。
それにしても…自分が歳を重ねるごとに、グルメではなく食いしん坊カミングアウトも度を超しつつあることに、つくづく苦笑い。

|

« 胡桃オイルとフラワーソルト。 | トップページ | 9時間のアラビアン・ブレイク。 »

おいしい拾いもの」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/140864/41252368

この記事へのトラックバック一覧です: 向田邦子の世界。:

« 胡桃オイルとフラワーソルト。 | トップページ | 9時間のアラビアン・ブレイク。 »