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2009/07/18

菩提樹の薫る風。

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蓮の頃。
はじめて顔をあわせて話したのは、
なんということ!
1日も違わず、きっかり1年前のこと。

7月15日。
竹取物語のように
突然に、本当にある朝突然に
彼女は天に召されてしまった。

梅雨明け前というのに抜けるような夏空の日。
彼女の城「菩提樹」という名の芸術館にて。
お別れではなく、旅立ちのお見送りに。
愛してやまぬ国へ、街へ、人のもとへ。
いってらっしゃい もっと、自由に
またいつか、約束の場所で。

蝙蝠はなぜか、何度も何度も
彼女の趣味を凝らしたカーテン越しによく眺めた
お庭の金木犀ばかり、見上げていた。
すると、読経の間に一頭の揚羽蝶が。
参列者に向かって
「またね 皆さんありがとう」と
微笑み告げるかのように舞って去っていった。


その夜。
「ぜひご一緒したい映画があるんです!」と
誘ってくれたことを思い出し、小さな映画館へ。
先週七夕の日、会って別れた足で
彼女ひとりがお先にその映画を観に向かった。
まさかこんな急に逢えなくなってしまうなんて。
その日都合のつかなかったことを深く悔やんだけれど、
映画が始まってすぐに、その思いは吹っ飛ばされた。

『ヴィニシウス 〜愛とボサノヴァの日々〜』

ボサノバの名曲「イパネマの娘」の作詞家で、
アカデミー賞受賞『黒いオルフェ』の原作者
ブラジルのヴィニシウス・ヂ・モライスの生涯。

外交官であり詩人だったドンファンのドキュメンタリー。
冒頭から語られるポエットが、歌われるリリックが、
ことごとく その日旅立っていった彼女からの
あまりにリアルなメッセージそのものに感じ、
最後まで蝙蝠のカラダとココロは震え続けた。

「ここに、来てほしかったの
ここで、伝えたかったの」
そんな声に呼ばれたかのようで。

お葬式の夜に、映画館へ。
音楽を、映画を、芸術を心から愛してやまなかった
小さな齟齬が大きな摩擦を生み炎上する
世界中の人々や国々の戦い争いに心を痛め続けた
蝙蝠が身近に知りうる誰よりも
知的で、高潔で、慈悲深い彼女だったからこそ。

最後に彼女が心を震わせた小さな暗闇の中で
そっと静かにお互いの魂を重ねあう
そういうことで、よかったんじゃないのかな。
思いとは、そういうものなんじゃないのかな。

だれもが、ひとりひとり特別な思いを抱いている。
だれもが、その思いを尊重しあう心を持っている。
それが真実であることを、蝙蝠は知っている。

最後に会った時
「しがらみをほどいて、
私たちらしいスタンスでまいりましょう!」
そうふたりで語り合った
その気持ちを忘れずに
自然体で横糸縦糸を編んでいける
心の自立した世界を歩いていこう。

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追記:
昨夜知ったけれど、映画を観た翌日すぐに、
彼女は自身のブログ「菩提樹の雑記帳」
そのレビューを綴ってアップしていました。

そういえば、菩提樹の楽譜台には、
「ラテン&ボサノバ」のスコアが置かれたままだった。
パソコンデスクの椅子には、
やはり開催中の「アーツ&クラフツ展」に刺激されてか、
ウィリアム・モリスの作品集がそのままに。
この展覧会のことも、2つの雑記帳に綴られている。
「ウィーンの雑記帳」
熱いな。とてもワクワクするし、刺激と勉強になる。
「とことん楽しむことが正しく学ぶこと」だと、
蝙蝠は彼女から教わった気がする。

ありがとう。
いまは感謝の言葉しかありません。

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