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2009/09/14

菩提樹でリュージュを。-その2-

Rb1

厳か。けれど、重々しい翳りはなく。
彼のたおやかな物腰ややわらかな声色が
此処の空気とふくよかに調和しているのだ。

映画『おくりびと』では、
納棺師のその所作に皆息を飲んだという。
彼がオルゴールを手に取り、螺子を巻き、蓋を開いて
菩提樹のティーテーブルにそうっと置く様子は、
あたかもソムリエかオルゴールに仕えるバトラーのよう。
あるいは…

亡きマダムの愛器「Ibachイバッハ」のピアノの屋根を上げ、
響板の隙間に瀟洒な象嵌を施したオルゴールを納める様子に
「菩提樹のおくりびと」と、心の中でひとりごちてしまった。

実際、ムク材の72弁REUGEオルゴールが、
菩提樹の中にいくつもいくつも並べられ、
黄金色のシリンダーが微かに光沢を放つ風情は、
マダムの御霊を送る精霊流しの灯のようでもあった。

H氏の真摯かつ彼女への深い敬意のこもったあいさつや
詳細なレクチャー、精巧なオートマタで参加者を魅了した
シンギングバードなどREUGEオルゴールの多彩な音色。
まるで目の前で人が演奏しているかのような
とても機械が奏でているとは思えない魂のこもった音楽。
聴けば聴くほど、心がリラックスして優雅に和んでいく。

貴族の間だけで楽しまれてきた芸術音楽が、
オルゴールの進化によって、庶民にも身近なものに。
そうした歴史的エピソードすらも、
彼女の思想や求めていた世界にすべて通じていく。

大衆的なロマ音楽楽を芸術音楽の域にまで高めた
ヨハネス・ブラームス編曲の「ハンガリー舞曲」は。
彼女曰くカフェや酒場などでよく演奏されるとか。
彼女の全身から繰り出される軽快なメロディが
蝙蝠の耳奥で鮮やかに息を吹き返し、
オルゴールの音色と楽し気に重なって、
不思議なコラポレーションDUOを体感した。

彼女がはじめてこのオルゴールを手にした時に思いつき、
飛び上がりそうなほど興奮して、イタズラっぽい笑顔で、
「きっと貴女もお気に召してくれるはずよ!」と話してくれた
その“特別な発見”とは・・・

それが、ピアノの響板の隙間にオルゴールを置き、
屋根(蓋)を開けたまま、あるいは閉じて聴くという方法。

楽器はそのボディに響かせて音を出すものであり、
オルゴールも箱や置く台と共鳴して音を奏でるもの。
ピアノ内部に納められたオルゴールは、ピアノ全体を共鳴体としてまるでそのルーツ(教会の鐘=カリヨン)を思い出したかのように、奥深く荘厳な音色に変化して、聴く者を祈りに導いていく。

薔薇が施された「Callista」というオルゴールには、
かの3人の女性作曲家達の曲目が収められていた。

川辺にて:ファニー・メンデルスゾーン
アレグロ・ノン・トロッポ:クララ・シューマン
父の庭:アルマ・マーラー
※蝙蝠セレクトの各リンク先もけっこうイケます。

やすらかな時を 忘れ得ぬ時を
一緒に過ごした時を
繰り返し繰り返し 螺子を巻きつづける
生きている限り その役は終わらない

Rb2

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